都立推薦入試小論文道場

都立西・日比谷高校の推薦入試作文・小論文対策を行います。

平成30年度 東京都立日比谷高校 推薦選抜にもとづく選抜 小論文―解答への導き&模範解答―

 

平成30年度 東京都立日比谷高校 
推薦選抜にもとづく選抜 小論文

 

―解答への導き―

 
問題はこちらより。

www.hibiya-h.metro.tokyo.jp

 


解答例

note.com

 

―問―

 
図1は、
世界5か国の年間平均降水量を示したものである。

 


図2、図3は、それらの国の水資源量と、水資源量のうち実際に使用した水の量である
水資源使用料を示したものである。

 
図4、図5は、それらの国の国土面積と人口に関する資料である。

 
また、図6は、安全な飲料水を手に入れられる人の割合を示したものである。これらの図をもとに、次の問1と問2に答えなさい。

 

問1

図1~図4から、他国と比較した日本の水資源量の特徴を示したうえで、図5から、水資源量を国民1人あたりに換算した場合の現在の日本の特徴と、今後予測される変化について、200~240字で説明しなさい。

 

問2

地球上の水資源問題の特徴について、図1~図4から読み取ることのできる側面と、図5から読み取ることのできる側面の両面から説明し、さらに図6も参考にして、安全な飲料水を手に入れられる人の割合が少ない国に対して日本としてできることについて、あなたの考えを320字~360字で述べなさい。

 

 

―総評―

 
H30年度の問題は、水資源利用のあり方を問う問題でした。水資源利用問題もこれから課題となる世界的テーマです。H29年度の社会保障制度についての問題もそうだったように、近年の日比谷高校の問題は、社会的問題、グローバルな問題を数値とともに考えさせる傾向があります。したがって、推薦入試を受けると決めたら、時事問題等についてまとめられた本を、
一通り目を通しておき、自分だったらその問題をどのように解決するか考えておくと、解答しやすくなります。

 
世界の水資源についての資料の分析を行う問1と、水資源利用の課題についての解決策を問われる問2から構成されています。複数の資料の特徴を短時間のうちでおさえ、さらに問2では
「安全な飲料水を手に入れられる人の割合が少ない国に対して日本としてできること」を、ファクトベースで発想し、提示しなければなりません。

 
これを50分間で解答することを考えると、H29年度の社会保障制度についての問題に引き続き、日比谷の問題はなかなかハードな問題だったと言えます。

文章作成技術はある程度身につけられたとしても、資料分析法や発想法を鍛えておかないと
日比谷の問題は簡単には解答できないと思います。

 

―問1 攻略法―

 
【設問の指示に愚直に従い、資料の分析をコンパクトかつ的確に行え!】

一見すると字数のわりに、指示が多い設問に見えます。つまり、

 
①他国と比較した日本の水資源量の特徴を説明したうえで
②図5から、水資源量を国民一人あたりに換算した場合の現在の日本の特徴と、
③今後予測される変化について

 
という3ポイントについて説明する必要があります。

 
設問の指示には愚直に従ってください!一つでも要件を落としたら、減点か得点できないと思っていたほうがいいです。上記の3ポイントを押さえるための資料分析を行う必要があります。ただ漫然と資料を眺めているだけではダメですよ。

 

ポイント①

 
水資源量の特徴を説明する必要があるのだから、図2をまずは見る必要がありますね。 
水資源量が突出して豊富なアメリカ、カナダと、それに比べると豊富とは言えない日本、フィリピン、ナイジェリアに分けられますね。だから、アメリカ&カナダと、日本の水資源量を比較するのが妥当でしょう。また、フィリピンは、水資源量は日本とさほど差がありませんが、
年間平均降水量については差があることが図1からわかりますので、これも指摘しましょう。また、図4があるので、単位面積あたりの水資源量を算出して、他国と比較することが可能です。

ちなみにこの資料にもとづけば、日本の単位面積あたりの水資源量の割合は113%であり、
他国を圧倒して水資源量は豊富だと言うことができます。(算出の仕方は、省略しますよ。ただの百分率の計算なので。)
他国と比較することが求められているのですから、比較の軸をきちんと立てて、簡潔に言語化していくことが重要です。

 

ポイント②

 
「水資源量を国民一人あたりに換算した場合の現在の日本の特徴」と言われていますので、国民一人当たり換算の水資源量を算出しましょう。図5から現在の日本人の人口をおよそ1億2000万人だと見て、水資源量を人数で割れば一人当たりの水資源量が出てきますね。水資源量が多いアメリカ、カナダもついでに算出しましょう。そして、日本と比較すれば、日本の特徴が述べられます。

 

ポイント③

 
「今後予測される変化」。これは図5を見るとわかりやすい。日本の人口は今後減少傾向にあることが読み取れますよね。少子高齢化が進んでいると聞いたことがあると思います。この人口変化と水資源量を結び付けて考えると、解答の方向はおのずと出てくると思います。上記の3ポイントを240字以内でまとめると、模範解答のような解答ができあがります。

 

 

 

 ―問2 攻略法―

 

【ファクトベースで現実的かつ妥当な解決策を考えろ!】

 
問2の設問の要求は2つあります。

 
Ⅰ:地球上の水資源問題の特徴について、図1~4から読み取ることのできる側面と、
図5から読み取ることのできる側面の両面から説明し

Ⅱ:図6も参考にして、安全な飲料水を手に入れられる人の割合が少ない国に対して日本としてできることについて、あなたの考えを述べなさい。

 
Ⅰは問1と同様の資料分析の問題です。

 
問1では日本の水資源量の特徴を説明する必要がありましたが、問2では地球上の水資源問題の特徴を説明します。視点を広げる必要があります。

 
まずは、図1~図4をじっと眺めて、地球上の水資源にはどのような特徴があるか考えてみてください。模範解答では、以下の2点を指摘しています。

 
①国によって水の流入量や水資源の分配・利用には、大きな差があること

 
②地球上の水資源問題の特徴は、水が地域により偏在する資源であること

 
上記2点以外にも、指摘することができます。

 
考えてみてくださいね。

 
続いて、図5から読み取ることができる水資源問題の特徴を考えてみましょう。

 
模範解答では、「世界の人口は将来的に増加傾向が見られ、これに伴い世界の水需要も大幅に増加するという問題」を指摘しています。

 
日本以外の国は、今後、人口増加の傾向が見られます。特に、ナイジェリアなどのアフリカ諸国の人口増加は水資源利用においても課題となり、深刻な水不足も予想されています。最後に図6も参考にして、「安全な飲料水を手に入れられる人の割合が少ない国に対して日本としてできること」を考える必要があります。

 
ここで発想が問われるわけですが、

 
重要なことは、妄想や、現実的ではない解決策を書いてはいけないということです。

 
こうした問題において、思考放棄をして、実現可能とはとても思えない答案を書いてくる生徒を何人も見ています。

 

たとえば、「ミネラルウォーターを大量に買って、アフリカに送る」、「雨雲発生装置を作る」、こういう解答ではダメですからね!

 
それじゃあ、どういう解答がいいんだよ、というのは模範解答を参考にしてもらうことにして、発想の重要な部分である、「ファクトベースの思考」をここでは説明しておきます。

 
ファクトベースの思考とは、fact base 要するに「事実に基づいた思考」なわけです。ここでいう事実とは、具体的な数値や、実際に行われている、あるいは行われた出来事のことです。 
今回の問題に即して考えれば、「安全な飲料水を入手するために、日本は何ができるか」
という課題に答えることになります。いろいろな方向に考えていくことができると思いますが、大切なことは事実に基づいて考えるということです。たとえば、東北大震災では飲料水確保が大問題となり、その後、大規模災害等に対する水供給システム検討が進められました。

 
こうした事実を考えると、日本が世界の水資源利用に貢献できる可能性がいくつか見つかって、解答に活かせることがわかると思います。これが、ファクトベースの思考です。

以上のような思考を展開して、書くべき内容を揃えたら360字以内でまとめる文章作成技術が課題となってきます。これは、訓練して身につけていかなければなりません。したがって、
日比谷の小論文対策は小手先のテクニックでは対応できませんよ。文章作成技術に加え、資料分析法、発想法を身につけていく必要があります。

 

 

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