都立推薦入試小論文道場

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平成27年度 東京都立西高校 推薦選抜にもとづく作文問題 ―解答への導き&模範解答―

 

平成27年度 東京都立西高校 推薦選抜にもとづく作文問題

  

次のことばについて、あなたが感じたり思ったりすることを六百字以内で述べなさい。

 
「自分では前を見ているつもりでも、実際はバックミラーを見ている。」
マーシャル・マクルーハン

 

  
解答例1

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解答例2

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解答例3

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解答への導き

 

「自分では前を見ているつもりでも、実際はバックミラーを見ている。」

 

まずは、この言葉が何かしら人間の経験の在り方を一般化して示していることを読み取ろう。そこからさらに、「前」や「バック(後ろ)ミラー」という言葉を解釈する必要がある。「前後」は、空間的な位置関係を示すばかりでなく、時間的な経過の関係も表現する言葉だ。だから、見ること(=人間の経験)のうちには、時間的「前後」の関係性があると解釈できる。すなわち、今、見ているという現在の経験には、「過去」(バックミラー)が必ず関わっているということだ。したがって、このような言葉の解釈を手掛かりに、人間の経験の在り方を考えたとき、次のように言える。現在の経験には、過去の経験の影響が必ずあり、また現在の経験は、過去のさまざまな経験なしには成立しえない。このような解釈を得られたら、この解釈を例証する具体例を挙げよう。

 

解答のプロットとしては、

 

①問題文に対する自分の解釈の提示

②この解釈を支持・例証する具体例の提示

③結論

 

という体裁を取るとよいだろう。

 

 

解釈には想像力が必要だ。与えられた言葉からまずは自由に想像してみてほしい。そのあとで、得られた自分の解釈を日常の経験に当てはめてみよう。説明が上手くつけば(理に適っていれば)、その解釈は妥当なものと言える。

 

  
マーシャル・マクルーハンは、メディア理論の泰斗だ。ここでメディア理論について詳しく論じることはできない。しかし、雑駁な言い方をすれば、マスコミと人間との関係や、諸々のコミュニケーションの仕組み、効果・影響を扱うのがメディア理論の分野だ。

  
こうしたマクルーハンの専門とするメディア理論の要素を少し加えた観点から作った解答が解答例3だ。なかなかおもしろい解答になっているだろう。解答の仕方としては応用といえる。

  
現在、スマホやパソコンといったインターネット端末は、ほぼリアルタイムで情報を「伝える」ことができる。一方で、テレビというメディアを通して「伝わる」情報は、どうしても断片的な過去のものにならざるを得ない。ここから得られる洞察は、いかなる情報であれメディアを通して「伝えられた」情報は「過去」のものとなるということだ。

  
マクルーハンの言葉のうちに、以上のようなテレビを代表するメディアの本質的なあり方を見出す解釈が解答例3だ。

  
マクルーハンの名からメディア理論を想起し、特にテレビというメディアと人間とのかかわりを的確に分析し、表現する点で、受験生にとっては応用となろう。しかし、このような解答をすることによって、採点者を唸らせてやろう!

 

 

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