都立推薦入試小論文道場

都立西・日比谷高校の推薦入試作文・小論文対策を行います。

令和2年度 東京都立西高校 推薦選抜にもとづく作文問題―解答への導き&模範解答―

令和2年度 東京都立西高校 

推薦選抜にもとづく作文問題

 

次のことばについて、あなたが感じたり

思ったりすることを六百字以内で述べなさい。

(50分)

  

「わかりやすさ」の罠(わな)に

はまらないようにするためには、

やはり私たち社会を構成するひとりひとりが、

「知る力」をもっと鍛えなければなりません。

池上彰

 

 

解答例

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解答への導き

都立西の推薦作文では、例年、学者や思想家の言葉が出題されてきました。しかし、今年はジャーナリストの池上彰の著作

 

『わかりやすさの罠 池上流「知る力」の鍛え方』

集英社新書、2019.

 

からの言葉が出題されました。近年で最も難しかったのは、やはりH29年の「世界は『のっぺらぼう』である。」(西江雅之)でしたが、それ以降の難易度は、易化傾向にあると思われます。来年はどうなるか、楽しみです。名だたる超一流の学者や思想家の言葉が出題されてきたのに、そこに池上彰が並び、何と言いますか、「池上かよ!?」、という気分になります。「西高も大したことなくなっちゃったんだなぁ」と一瞬思いましたが、実はさにあらず。これについては、のちに述べます。今年もまずは、解法の導きから!さっそく、いってみましょう。

 

ステップ1 課題文を解釈する

 

まずは、何といっても「わかりやすさの罠」という言葉が何を意味するのか、考えなくてはいけません。わかりやすいというのは、いいことなのではないか。そこにある、「罠」とはどういうことなのだろうか。しかも、池上彰自身がわかりやすくニュースを解説するおじさんなのに、それを否定するような「罠」という言葉はいったい何を意味するのか。わかりやすくニュースを伝えたり、聞いたりすることの裏には何があるんでしょうか。池上自身が解説するニュースは、非常に物事が簡略化されており、複雑な因果関係や周辺状況の説明が削ぎ落されています。だから、わかりやすいのです。 もちろん、ある事象を最初からすべて説明することは不可能ですし、それがよいことというわけではありません。しかし、簡略化された、「自分がわかる」「自分にとって聞きやすく、心地の良い」ニュースや情報ばかりを得ていたら、どうなるでしょうか。そこにある「罠」を具体的に考えることが鍵となります。「複雑なものを複雑なままにとらえる」知性がないと、どんなことになってしまうのか、考えてみてください。模範解答では、池上の言葉を自分にとってわかりやすく、都合が良い情報のみを得て、信じた結果、そのわかりやすさそのものに騙されてしまうこととする解釈を提示しました。こうした課題文に対する解釈を示すことが、西高作文攻略の第一歩です。

  

ステップ2 解釈を支持する具体例を挙げる

上記のように、解釈を提示出来たら、具体例を挙げましょう。 H31年度の「解答の導き」では、ステップ2で「解釈にもとづいた自分の主張を行う」と指示していますが、どのような構成を行い、どのように説得力のある作文のスタイルを構築するかも考えるべきポイントですから、問題に合わせて最も効果的な構成を考えていきます。「このスタイルで書けば、絶対大丈夫!」ということはありません。自分の論の展開に合わせて「適切なスタイル」そのものを考えることが重要ですし、そうした思考力を西高は求めます。模範解答では、ナチスドイツ政権下のドイツ国民を例に挙げました。みなさんも、歴史の授業で習ったと思います。もちろん、これ以外にも具体例は無数に考えられます。大事なことは、自分の提示した解釈を広く一般的に支持する事象を具体例として挙げることであり、そうした発想ができるかどうかです。 

今回、歴史的事実に訴えたのは、提示した解釈をもっともよく表す事象であり、誰もが認めうる事実だと判断したからです。中学生は、作文となるとだいたい日常生活、しかもほとんど部活動の体験から具体例を考えようとします。発想が度し難いほど貧困と言わざるをえませんね。しかし、西高を目指す諸君らは、広く社会や歴史に目を向けて、ものを考える必要があるというわけです。社会科や国語など学校の授業で学んだこと、本で読んだこと、ニュースで知ったことなど、ともかくもっと広い観点から考える必要があります。そのためにも、日常的に様々なことに関心を持つようにしておきましょう。池上彰のわかりやすいニュースを漫然と聞き、「へぇ~、そうなんだぁ」と納得しているだけではダメなのです。

 

 

ステップ3具体例にもとづいて自分の主張を行っていく

 ナチスドイツ政権下のドイツ国民のあり様と、池上の言葉から何が言えるのか。自分の主張を具体例にもとづいて、述べていきます。模範解答では、二つの主張を行っています。

 

①わかりやすいものや耳触りの良い言葉、自分にとって都合の良い情報だけを得ようとしてはならない、

 

②事物の背後にある複雑なものや自分にとって切実な問題に向き合いながら、物事をより深く知ろうとしたり、時には批判する知性や勇気を身に付ける努力が必要だ

というものです。

 

こうした主張を自分で考えることができるか。ともかく、西高の作文問題は考えさせる問題です。与えられた問題をルールや定石にしたがって解く(というか、処理する)という意味での問題ではなく、素材をもとに発想をいかに展開するかが問われる問題なのです。

 

以上の3ステップを踏まえて、最後に簡潔な結論を述べれば、模範解答のような答案ができます。

 

 

なぜ、池上彰なのか。

 

以下は、令和2年度問題の西高校出題意図についての私見ですので、受験生が必ずしも読む必要はありません。とはいえ、解答のうえでの発想に役に立つ示唆を含むものと思われますので、興味のある方はどうぞ。 

池上彰が出題されたことを知って、「なんだよ~、池上かよ~(がっかり)」と正直思っていました。西高の出題ではこれまで、そうそうたる学者や思想家の言葉が並べられてきたのに、池上って、「おい、西高校、おかしいだろ!」と。しかし、課題文を見て考えてみると、さにあらず。この問題は、「池上的わかりやすさ」、あるいは常識的には良いこととされる「わかりやすい」という性質に対して、いかに批判的になれるのかが問われており、常識を疑うという意味で哲学的問題だと言えるのです。 

池上彰は、自身の番組でともかくわかりやすくニュースを解説することに努めてきたと言います。しかし、そうした自分の取り組みが裏目に出ていることも感じ取っているようで、本当は自分のニュース解説をきっかけとして、視聴者により深い関心を持つことや探求の姿勢を求めたいのだというわけです。ところが、彼の思いとは裏腹に、世間ではわかりやすさばかりが求められる。皆、自分に分かる、すなわち、聞いていてすっきりする、心地のよい言葉や解説を聞いていたいというわけです。 

こうした思いを抱えながら、なおもテレビに出演する池上の姿勢には、矛盾を感じますが、彼自身としてはそうした思いや考えがあるようなのです。 

西高の出題意図は、そんな池上の気持ちや問題意識を汲み取っての出題というわけではもちろんないと思います。 大事なのは、世間にあふれる「池上的わかりやすさ」に対する批判的思考を展開できるか、「わかりやすい」という是とされる性質に対して、常識に反して批判の目を向けられるかどうかが問われているのだと思います。 

テレビで「わかりやすく説明をしてくれる」あの有名なおじさんの言葉を批判的に解釈できるか、これを西高は問いたいのだと思います。つまり、池上彰を反面教師として批判せよ!というわけです。池上はただの「かませ犬」なわけです。そうそうたる学者・思想家が出題されてきたなかでの池上彰、というよりは、かませ犬彰なわけですから、西高の権威(?、笑)に傷がつくわけではないのです。

さて、以上のように「池上的わかりやすさ」に対する違和や懐疑を抱くのに、うってつけの本があります。はからずも池上や池上の著作に冷や水を浴びせるようなタイトルです。

 

 

本書から、少し引用してみましょう。

 

批評家の大澤聡が『教養主義リハビリテーション』(筑摩書房)のなかで「読者におもねることと、わかりやすく書くこととは違う。けれど、いまはそのあたりがごちゃまぜにされていますね」と語っているが、まさにこの双方を率先してごちゃまぜにしてきたのが池上彰の話法である。池上彰の名が掲げられた番組では、必ず数名の芸能人がひな壇に並び、「この際だからイチから学びたいんです。池上さん、よろしくお願いします」という表情をしている。坂下千里子小島瑠璃子などが、目をまん丸くさせながら新たな気づきを得る光景を、もうずっと見せられている。大澤が言う「おもねる」が可視化された状態。国内の政争であっても、中東の紛争であっても、企業の汚職であっても、それらを押し並べて端的に説明してくれる池上彰の「わかりやすさ」には「おもねる」が強い。いや、それとも、池上自身は「おもねる」ことなく、周囲がただ(そんな言葉があるのか怪しいのだが)おもねらせているだけ、なのだろうか。

武田砂鉄『わかりやすさの罪』p.78より引用

 

なかなか、刺激的な指摘です。武田砂鉄は、目下、キレッキレッのフリーライターです。受験生は、池上彰の著作より、武田砂鉄の著作を読みましょう!「池上的わかりやすさ」に対する批判的観点を得られると思います。

 

 

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令和2年度 東京都立日比谷高校 推薦選抜にもとづく選抜 小論文 ―解答への導き&模範解答―



 

令和2年度 東京都立日比谷高校 

推薦選抜にもとづく選抜 小論文

 

―解答への導き―

問題はこちらより。

www.hibiya-h.metro.tokyo.jp

 

 

解答例

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―総評―

集団が意思決定をする際の方法論について吟味させる非常におもしろい問題でした。問題を解けばわかると思いますが、挙げられている3つの方法で、決定される演目がそれぞれ異なりますね。そのなかで、どの方法が優れていると考えられるか、その判断を行う。これが今回の問題では問われていました。

実はこの問題、同様の問題が慶應義塾大学総合政策学部で出題されています(2018年度総合政策学部小論文)。出題の規模が異なりますが、主旨や問題意識としては、慶應と日比谷はほぼ同じ問題でした。私は過去に慶応の問題を解いていたので、今回の日比谷の問題は「あ〜、これねぇ〜。めっちゃ簡単じゃん!」と一瞬錯覚してしまいました(笑)。しかし、初見の受験生にとっては、面食らったかもしれませんね。これを50分間で解答することを考えると、昨年度も日比谷の問題はなかなかハードな問題だったと言えます。文章作成技術はある程度身につけられたとしても、資料の分析法や発想法を鍛えておかないと日比谷の問題は簡単には解答できないと思います。

 

 

―問1 攻略法―

まず、図1を集計し、図2の表を埋めながら、指示どおりに各方法によってどの演目が選出されるか、明らかにしましょう。これができないと問2ができません。

①単純多数決

上記のように集計できれば、単純多数決による得票は以下のようになります。

 

桃太郎:6+9=15票

アニー:6+8=14票(2位落選)

レミゼ:5+8=13票(3位落選)

 

したがって、単純多数決では、桃太郎が選ばれます。

 

②決選投票付き多数決

課題文にあるように、決選投票として「1回目の得票数第1位または得票数第2位に投じられた票数に、3位で落選した人が挙げた2位の票数」をそのまま加算していきます。

 

桃太郎15票+5票(3位落選グループEの第二位の票数)=20票

アニー14票+8票(3位落選グループFの第二位の票数)=22票

 

以上より、決選投票付き多数決では、アニーが選出されます。

③ボルダルール

すべて点数化したものが以下になります。かっこの中が点数です。

 

点数を集計すると、

 

桃太郎:18+27+12+8+10+8=83点

アニー:12+9+18+24+5+16=84点

レミゼ:6+18+6+16+15+24=85点

 

したがって、ボルダルールでは、レ・ミゼラブルが選出されます。

 

以上の結果を端的に文章化してまとめれば、問1の解答としては問題ありません。

 

 

―問2 攻略法―

問1で、単純多数決では桃太郎が、決選投票付き多数決ではアニーが、ボルダルールではレ・ミゼラブルに演目が決定することがわかりました。決定方法によって得られる結果が異なる点が興味深いですね。どの決定方法がいいのでしょう。得られた結果を踏まえて、じっくり考える必要があります。

 

考えるべきポイントは二つ。

 

ボルダルールによる各演目の総得点は、何を反映していることになるのか。

 

単純多数決や決選投票付き多数決には、どのような問題があるのか。

 

ボルダルールによる点数化は、演目の人気度の比重を反映していると言えます。また、たとえば単純多数決では、票割れが生じる難点があります。こうしたポイントを考えられるかどうかが攻略の鍵となります。各決定方法のメリット、デメリットをいろいろと考えてみてください。また、演目を決定する際に重視するべきことは何なのかを考えることも大切です。演目はこのクラスにおいて皆が取り組みたいと思うものである必要があるから、より多くの生徒から賛意が得られる演目が選出される必要がありますよね。以上の点について、判断の根拠を明確にしながら、論述を行っていく必要があります。

 

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令和3年度 東京都立日比谷高校 推薦選抜にもとづく選抜 小論文 ―解答への導き&模範解答―


―解答への導き―

問題はこちらより。

www.hibiya-h.metro.tokyo.jp

 

解答例

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・都立日比谷高校 推薦入試小論文の極意

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〈総評〉

ついに日比谷でもSDGsが出ました。今さら感がなきにしもあらずですが、そこは天下の日比谷です。SDGsにおけるトレードオフという非常に現実的な問題を考えさせたり、国家レベルでのSDGsに対する国際貢献のあり方を問う問題は、非常に骨太な出題だったといえます。解答に当たっては、SDGsに対する一定の理解があることが前提とされていますので、やはり日比谷高校を目指す生徒は、学校での勉強はもちろんのこと、広く社会や世界的問題に日ごろから関心を持ち、ニュースや新聞にも十分に触れておく必要があるといえます。

  

問1

SDGsが抱えるトレードオフの問題について考えさせる問題でした。SDGsの達成には、「トレードオフ」の解消が必要とされます。「トレードオフ」とは、何かを選ぶ際に他の何かを犠牲にする状況を指します。たとえば、高齢者への福祉を優先して政府の予算を使えば、若者の教育のための予算が減ります。逆もしかりです。したがって、SDGsの17のゴールの間において、経済・環境・社会といった3つの要素間でもトレードオフの問題が発生します。これまで資本主義社会においては、費用対効果という大義名分によって、最も高い成果をあげるところに資源を集中投資する傾向がありました。しかし、それによって犠牲にされた人々が置き去りにされてきました(オリンピックの実現のために、地域の居住者の立ち退きを迫るなど)。どのようなトレードオフが存在し、どうすれば解消できるのか。その問題発見こそがSDGs達成への第一歩であるといえます。

さて、問題は字数が非常にタイトですので、余計なことを書いている余地はありません。したがって、「良い影響が及ぶ目標は、~~~~~である。というのも、〇○○だからだ。他方で、悪い影響が及ぶ目標は×××である。なぜなら、▽▽▽だからである。」といった端的な表現で説明する必要があるといえます。

 

問2

「図2、図3から現在の日本が世界をリードしてその取組を発信できる目標を示し、その目標を選んだ理由及び、具体的に日本がどのような取組を行い国際社会に貢献していくことができるのか」が問われている問題でした。まずは、設問をよく読み(絶対に最低でも3回は設問を読みましょう!)、解答に当たって何を記述する必要があるのか正確に把握しましょう。大きく以下の二点について、二段落構成で論述できるとよいでしょう。

 

①どの目標を選択するのかについて理由とともに説明する必要があります。目標を選択した合理的理由を図のなかから見出す必要があります。大事なのは「現在の日本が世界をリードしてその取組を発信できる目標」ですので、二つの図からどの目標ならば日本が世界をリードできるといえるのか分析し、その理由を説明する必要があります。世界をリードするには、日本がすでにある程度実績があることが評価されていたり、現在も目標達成に向けて順調に成果を上げている目標を選択することが妥当だと判断できると思います。

 

②具体的に日本がどのような取組を行い国際社会に貢献していくことができるのか、説明する必要があります。日本には具体的に何ができるのか、理由・根拠とともに説明しましょう。この手の問題だとすぐに「発展途上国に資金援助します」と書いてくる答案を腐るほど見ます。資金援助なんてとっくの昔からさんざんやっているのです。そんな提案を日比谷は求めていません。トレードオフが生じないような骨太な対策を考えて、説明する必要があります。また、日本としても世界をリードできるような取組を挙げ、なぜそうした取組が日本に可能であるのか、あるいは日本の得意技であるのかを理由として説明できるとよいでしょう。

 

 

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令和3年度 東京都立西高校 推薦選抜にもとづく作文問題―解答への導き&模範解答―




令和3年度 東京都立西高校  推薦選抜にもとづく作文問題

次のことばについて、あなたが感じたり思ったりすることを六百字以内で述べなさい。(50分)

 

「ドアをあけると風が私を待っていた。だから私は、黙って風に自分を預けたのだ……。」(黒井千次

 

解答例

 

解答への導き

令和3年度の都立西の推薦作文では、黒井千次の小説『風の絵本』(講談社、1974)の一文から出題されました。黒井千次は小説家であり、都立西高校の出身です。例年、科学者や数学者、思想家のことばが出題される中で、小説家のしかも小説からの出題は初ですね。令和2年度の池上彰からわずかですが、出題の趣向が変わってきているといえます。とはいえ、例年どおり、与えられた言説から何を考え、何を語ることができるのかが見られる試験となっている点は変わりません。

 

ステップ1 課題文分析し、論点を提示する

この黒井千次の小説からの一文において、まず「風」という言葉が擬人的に用いられていることに注目しましょう。そのうえで、まず一般に風という言葉が何を指すのかを確認したうえで、擬人法をもって表現されるこの文において、「「風」が何を象徴しているのか」という論点を提示します。

 

 

ステップ2 課題文を解釈する

擬人的に表現された「風」という言葉が何を象徴するのかをじっくり考えてみてください。ここがこの問題を攻略するうえで非常に重要なポイントになります。この「風」という言葉をどのように解釈するかによって、解答の方向性が異なってきます。

一般に風とは自在に運動する空気の流れです。また、風は目には見えないものであり、感じられるものです。そして、この文では「風に自分を預ける」と表現されており、自分のあり方を委ねるものとして表されています。したがって、自分のあり方に関わるものとしての「風」とは、何を意味するのかと考えを展開することができるとよいです。

自分がどうあるのか、自分がどうありたいのかを決定する要素として重要なのは、人間の「意志」です。したがって、模範解答ではこの「風」を、「ドアをあけた「私」が自分らしく生きようする意志を象徴している」と解釈しました。みなさんも自分なりの解釈を生み出してください。

さて、上記のように「風」について解釈ができたら、その解釈に基づいて「風が私を待っていた」や「黙って風に自分を預けたのだ」といった表現についてもどのように解釈することができるのか、説明します。そのうえで、黒井のことばは全体として何を意味しているのか、説明することができるとよいでしょう。

 

 

ステップ3 解釈にもとづきことばから何を感じたのか、思ったのかを説明する

全体としてこのことばをどのように解釈し、理解することができるのかについて説明することを示すことができたら、設問の要求に従って、最終的にこのことばから何を感じたり、思ったのか説明します。このことばから「風のように自由に生きることへの希望を感じる」といった自分なりの感じや思いを丁寧に表現しましょう。前向きなとらえ方や考えを示すことができるとよいでしょう。

 

 

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令和4年度 東京都立西高校 推薦選抜にもとづく作文問題 ―解答への導き&模範解答― 




令和4年度 東京都立西高校 

推薦選抜にもとづく作文問題

 

次のことばについて、あなたが感じた、考えたことを六百字以内で述べなさい。(50分)

「人間らしさ」という言葉は、「人間らしさ」が失われようとするとき、あるいは損なわれるような事態に陥ったときに口にされる。(畑中章宏)

 

解答例

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都立西高校推薦作文問題の極意

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都立西高校 推薦入試作文の肝

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解答への導き

令和4年度の都立西の推薦作文では、畑中章宏の文章が取り上げられました。畑中は大阪府生まれの民俗学者で、『災害と妖怪』(亜紀書房)、『天災と日本人』(ちくま新書)、『21世紀の民俗学』(KADOKAWA)など多数の著作があります。西高ではこれまでも、科学者や数学者、思想家のことばが出題されており、その傾向に沿った問題と言えます。論述のポイントは、例年通り、与えられた言説をどのように解釈し、それを踏まえて何を論じることができるかという点にあります。

 

 

 

ステップ1 課題文分析し、論点を提示する

 まず課題文の言葉を解釈します。解釈とは、そのままでは曖昧だったりわかりにくかったりする事柄を分析し、説明することです。今回の問題で言えば、「人間らしさ」とは何か、それが口にされるのは、「それが失われようとするとき」だというのはどのようなことかを解釈する必要があります。この問いに対して明確に答えることが解答の鍵になります。

 

 

ステップ2 課題文を解釈する

 では、「人間らしさ」とは何でしょうか。課題文の前後がないので、筆者の主張はわかりません。したがって、この問いには各自が答えなければなりません。模範解答では、この問いを「人間の本質とは何か」という問いに変換したうえで、「心」を提示しました。ただし、「人間らしさ」と同様に、「心」も大変多義的な言葉なので、自分なりにさらに説明する必要があります。このように、説明に用いられる言葉が元の言葉よりも明確になっているかどうかは、論述においてつねに意識すべきでしょう。

 

 

ステップ3 解釈にもとづきことばから何を感じたのか、思ったのかを説明する

 つぎに、上で定義した「人間らしさ」が「失われようとするとき」とはいつなのかについて、具体的に考えます。模範解答では人工知能と人間の関係を取り上げました。

こうした論述の際に必要になるのは、科学技術や政治、文化といった多様な分野において問題となっている事柄についての幅広い関心と知識です。小論文というと、自分だけの独創的な意見を述べるものだと思う人もいるかもしれませんが、それは間違っています。むしろ、既知の内容であっても、それを説得力をもって論理的に課題文と結びつけて論じられれば、それは十分に独自の意見になります。そして、そのような文章を書くためには、普段からニュースや読書などによって多様かつ正確な情報に触れておくことが肝要です。このように、西高の作文問題は、考えさせる問題です。与えられた問題をルールや定石に従って処理するのではなく、それを素材にして自分の知識と融合させながらいかに展開するかが問われているのです。

 

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令和4年度 東京都立日比谷高校 推薦選抜にもとづく選抜 小論文 ―解答への導き&模範解答―

 

―解答への導き―

問題はこちらより。

http://www.hibiya-h.metro.tokyo.jp/SelectedEntrants/TestTheme.html

 

解答例

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〈総評〉

R4年度の問題は、地球温暖化対策と再生可能エネルギーに関連するもので、いわば定番のお題でした。受験生のなかでこのテーマに触れたことがない人はいないでしょう。しかし、紋切り型の答えを書いても、完璧な解答には辿りつけません。複数の資料を正確に分析し、論理的に関連づけたうえで、制限字数内に収める文章力が求められます。さらに、問2では、温暖化対策の内容だけでなく、ひとひねりを加えて、対策の派生的効果が問われたため、通り一遍の小論文対策では太刀打ちできなかったと思います。やはり日比谷高校を目指す生徒は、解法の定石を抑えることは当然ですが、さらに広く視野を持ち、社会的、世界的問題を多角的に考えられなければなりません。そのためには、日ごろからニュースや新聞に触れ、幅広い読書をする必要があるでしょう。どちらの問いも字数指定が非常に厳しいので、必要な情報を端的に表現することが求められます。基本となる文章作成技術に加え、正確な資料分析法、柔軟な発想法を身につけていく必要があります。

 

問1

再生可能エネルギーに関連する四つの図表が示され、再エネ推進の取り組みについて、日本と欧州を比較する問題でした。それぞれの図から何を読み取ればいいかは比較的容易にわかります。図1を見れば、欧州に比べて日本が再エネ以外の電源に大きく依存していることが一目瞭然ですし、図2は再エネ(とくにバイオマス)の発電コストが火力に比べて高いことを示しています。図3からは、欧州も日本も、太陽光発電のコストが年々下がっていることが分かりますが、下げ幅は欧州のほうが大きく、日本では割高になってしまっている現状が読み取れます。最後に、電力網の仕組みに大きな違いがあることが図4からわかります。

さて、ここまでは、日比谷を受験する中学生であれば即座に見て取れることです。しかし、これらの情報をただ並べるだけでは不十分です。出題者は、受験生が四つの図の論理的関係を見極められるかを尋ねています。つまり、それらのあいだで原因、結果、例示といった何らかの関係が成り立っているのではないか、と考える必要があります。そのように考えてみると、図1が、テーマである再エネ推進に向けた日本の現状を端的に表していることに気づきます。そして、なぜ日本の再エネ利用が進んでいないのかが、コストや電力網という個別の観点から図2~4によって説明されているのです。提示されている情報に対して指定字数がかなり少ないので、すべての図に触れながら必要な情報だけを簡潔にまとめるのは至難の業でしょう。そのため、入念な対策が不可欠になります。

 

 

問2

地球温暖化にまつわる問題でしたが、単にありきたりの対策や目的を問うのではなく、その対策から「付随して得られる効果」を問うことで、想像力を働かせて常識の一歩先を考えさせる良問でした。さらに、「温暖化対策を進めていくなかで生じうる問題」も併せて問うことで、温暖化という広くコンセンサスの取れた問題の裏面を考えさせ、受験生の多角的な思考力や発想力を見ようとしています。

回答に当たっては、まずはメジャーな温暖化対策を複数思い出したうえで、それらの副次的な効果を考えてみましょう。つぎに、副次的効果のうち、より一般性・普遍性の高いものを選び、回答にまとめます。最後の温暖化対策の負の側面については、現代社会が抱えるその他の問題(模範解答では食料問題)を考え、それと結びつけられないか、という発想が求められます。

この問題も字数制限が厳しいので、余計なことは書かず、主語と述語の対応に注意しながら、端的に論述するよう心がけましょう。

 

 

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【都立推薦入試小論文道場】受講希望の皆様へ

〇指導内容   

当講座の受講対象者は、 都立西高校、都立日比谷高校の 小論文・作文対策指導を希望する中学三年生です。 厳しい指導を行います。 発想法や論理構成、 レトリックの技法、 具体例の挙げ方、助詞の使い方にいたるまで、 刀剣を作るように徹底して鍛え上げます。 したがって、添削は出来次第では文章の全行に赤入れをします。 また、与えられたテーマについて何を考えるか、 どう考えるのかという思考法を講師との 本気の対話をとおして磨き上げます。   

 

〇講座内容


・添削コース
添削+添削指導書(内容に関する詳細な指摘、小論文の改善方法を文面によるレポート形式で指導いたします)+模範解答

※ある程度「書く」ことができる生徒様のご受講をおすすめいたします。

 

 

・添削+リアルタイム映像対面指導コース

上記添削に加えて、オンラインでの対面指導を行います。添削では教えきれない課題に対する発想法や考え方、小論文を書くための背景知識などについて指導いたします。また、自己PRカードの作成指導、集団討論の練習も行います。対面指導は、60分です。

 

〇受講料

(受講前のお支払いとなり、指定口座への銀行振込をお願いしております。)

・ご入会金 ¥10,000-(税込¥11,000-)

・添削コース 1回 ¥10,000-(税込¥11,000-)

・添削+オンライン対面指導コース

作文・小論文指導 一回(添削+アドバイスレポート+対面指導60分)

¥16,000-(税込¥17,600-)

 

面接対策・自己PRカード作成指導 一回(添削+対面指導60分)

¥15,000-(税込¥16,500-)

 

〇指導の流れ  

①事前に課題の内容について、小論文や作文を書いてもらいます。 作成した解答を送っていただきます。

※原稿用紙に小論文・作文問題を解答していただき、 スキャナーなどでスキャンしたものを 下記メールアドレスに送っていただくか、 スマートフォンや携帯電話のカメラで、 作成した解答を撮影し、 送っていただきます。   

②オンライン指導 (60分)

添削した原稿を指導前にお送りし、 オンラインにて対話形式の指導を行います。 日時は受講者様のご予定をお伺いして決定いたします。  

 

お問い合わせ・受講申し込みはこちら

https://ssl.form-mailer.jp/fms/2478c063472725   

 

〇ご連絡先   

雄飛教育グループ 潜龍舎プロデュース

【都立推薦入試小論文道場】

代表 佐藤 陽祐

メール:dr.sato.suisen.shoron@gmail.com

都立西、都立日比谷推薦入試合格実績

2017年度 都立西高校 合格

2018年度 都立西高校 都立日比谷高校 合格W輩出!

2019年度 都立日比谷高校 合格

2020年度 都立日比谷高校 合格

2021年度 都立日比谷高校 合格