平成29年度 東京都立西高校 推薦選抜にもとづく作文問題―解答への導き&模範解答―
平成29年度 東京都立西高校
推薦選抜にもとづく作文問題
次のことばについて、あなたが感じたり思ったりすることを六百字以内で述べなさい。「世界は『のっぺらぼう』である。」 (西江雅之)
解答例
解答への導き
ステップ1.「のっぺらぼう」という言葉のみに囚われ、思考を停止させない。
ひとまずこの問題を見て、「なに言ってんだよ!?」という感想を大事にしていい。
「のっぺらぼう」という言葉だけに囚われていると何も発想できないだろう。
そこで、この一見すると非常識的な言葉に常識的な立場から思考を展開させていこう。
まず、この段階がこの問題を解くためのステップ1。「のっぺらぼう」という言葉に振り回されない胆力が必要だ。
ステップ2.常識の立場から問題を立てる。
「のっぺらぼう」というのは表情がないということだ。しかし、この世界には各々の事物がそれらに固有の姿を持って現れているように見える。目の前の机や鉛筆や教科書、外に出れば学校や先生や友達、空や雲や太陽や月がある。世界は「のっぺらぼう」なんかじゃ全然ない。この常識的な考え方から、さらに問いを見つけよう。
「のっぺらぼう」とは反対に、世界には様々な事物があって、色や形があるけれども、
これらを私たちはどのように区別しているのか。
という問いを立てられるか。この段階がステップ2。
ステップ3. 自分の考えた問いの文脈で課題文の言葉を解釈する。
世界を私たちはどのように区別しているのか。私たちは「あれ」や「これ」といった「言葉」で世界を区別している。
すなわち、言語によって世界を分節化しているのだ。
すると、「のっぺらぼう」という言葉が表している世界は言語によって区別される以前の、いわば一つの連続した世界の在り方を指す言葉だと解釈できるだろう。常識の立場から問いを立て、自分で解答(言葉によって私たちは世界を区分している。)を導き出し、その解答を足掛
かりにして今度は「のっぺらぼう」という言葉を解釈できるかという段階、これがステップ3。
課題文に対して以上のような解釈をすることができたら、最後にこの解釈から自分なりの結論を提示しよう。
「世界は『のっぺらぼう』である。」
=言語がなければ世界は一つの連続したあり方をしており、そこには区別がない以上、表情もない。
→反対に世界は、言語によって分節化され、この分節の仕方は使用される言語(=文化)によって異なる。
結論:ものの見方や考え方について、絶対的なものはない。言葉の違いが世界の見え方の違いを生み、この違いを相互に認めて世界の人々と交流していくことが肝要である。
以上のような発想法と論述の組み立てを行えば、合格答案を作ることができる。しかし、「そもそもこんな発想ができないよ!」という声も聞こえてきそうだ。
今回は具体例の発想の仕方は割愛したが、妥当な解釈や効果的な具体例を挙げるための発想法
は鍛えることができる。
そのために【都立推薦入試小論文道場】が存在する。
「どう書くか」も重要だが、その前に「何を書くか」だ。今回、模範解答作成者のプロット(作文の骨組み)も掲載しておく。参考にしてもらいたい。